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『地球と人のあいしかた』 岩崎公弥子著 高陵社書店

 一年以上も前になる。友人に子守を頼まれ訪れた名古屋市科学館の売店でこの本をみつけた。パラパラとめくり、これはきっといま手にしないと、もう読むことはないだろうと感じた。そしてレジへ向かった。そのとき一緒に購入したのは星座がちりばめられた鉛筆と、月の満ち欠けが描かれたノート。鉛筆はもちろん、連れていった子供にせがまれたものだ。五本でいくら、とあったのかもしれない。もう覚えていないけど、私も欲しくなって子供たちとじゃんけんして分け、手元に二本、残っている。

 章立ては三章。名古屋市科学館と、名古屋港水族館、そして東山動物園だ。正直にいえばそのとき私は、プラネタリウムの星をテーマになにか書きたいと考えていて、参考にしようという淡い計算もあった。ようやく読み終えて胸が熱くなり、これをこっそり自分のものだけにして隠しておくんじゃなくて、こんなすてきな考えと、日々、自然と私たちのためになにができるのかを頑張っている人々の「すがた」を、存分に伝えてくれるこの本を、どうしても紹介したくなった。引用の乱用はしない。人によっては何も届かないかもしれない。私の拙い紹介では、たしかにあるはずの大切なメッセージも、ほんの少しだって感じられないかもしれない。きっとこの本を、書店で偶然に目にすることはないと思う。でもAmazonで買える(中古しかなかったけど……)。

 メモを最初にとったのは、ここだった。

 『光が上に向かって漏れている』

 都会で見上げる夜空が田舎と違うのは、「空気が汚れている」ことが原因ではなくて、「光が上に向かって漏れている」からです。地球上の私たちが少しだけ街灯の作り方を変えるだけで、あるいは、建物や記念碑のライトアップの方法を少し変えるだけで、都会にも素晴らしい星空が戻ってくる。

 ここに、自然との向き合い方を今日の私たちにどう伝えていくのか、この思いを貫いて活動を続けている人たちがいる。尊いことだと思う。

 名古屋市科学館のプラネタリウムが、誇れる存在であることは前々から感じていた。大阪や、東京や、その他のプラネタリウムも体験したうえで、実感もしている。随分違うことが多い。どう違うのかは列挙しないけれど、同じドーム内で、学芸員が生解説をするということだけでも、レアなことなのだということ自体、名古屋を出て他所のプラネタリウムを訪れたとき初めて知った。

「夜、八時の、空です」

 そのゆったりとした眠気を誘うような穏やかな声は、笑いのネタになることだってあったりする。それくらい独自を貫いている。

 あとがきにも見える最後の第四章、座談会の中で、著者がタイトルとして抜いた言葉が、名古屋市科学館の学芸課天文係長である毛利勝廣さんの口から発せられた。――「地球は優しくされるほど弱くはない」と思うんです――と。そしてこう続く。私たちこそが、地球に愛される存在にならなければならないと。

 実際の宇宙は無限ではなくて限りがあり、そしてその限りの中で私たちも生活している。この本の収益金は、WWFに寄付されると、最後にひっそりと書かれていた。また胸が熱くなった。

 興味を持たれる方に、どうかこの本を通じて、「思い」が届くことを願って。

 きっと明日からの空が、また違ったものにみえてくるはずだ。

 取り留めもなく。

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