© 虹乃ノラン All rights reserved.
大きな古時計 いのちについて
おーきなのっぽのふるどけい♪
おじいさんの とけい♪
きっと誰もが知っている?のでしょうか。今の世代の若い方たちは、もしかすると平井堅さんの歌で、知った方もいるのかも?
おじいさんに愛された古時計は、うたのなかで『いまはもううごかない』とありますが、ひとりぼっちではありません。
三番では、こうなります。
まよなかに ベルがなった
おじいさんの とけい
おわかれのときが きたのを
みなに おしえたのさ
てんごくへのぼる おじいさん
とけいとも おわかれいまはもう うごかない そのとけい
ひゃくねんやすまずに
チクタクチクタク
おじいさんといっしょに
チクタクチクタク
いまはもう うごかない
そのとけい
子どものころ、この歌をどれくらい理解していたのでしょう。でもなんとなく、さみしいし、悲しいうただとは、感じていました。
いま見ると、おじいさんが生きている間は、古時計は大切に大切に生きていて、おじいさんに寄り添うようにして、ゆっくりとその時をとめたのであろうと、感じます。後を、追うようにして。
いのちは、いのちあるものにしか、宿らないのか。
いのちは、なにに、宿るのか?
とけいに いのちって あるのでしょうか。
現在公開させていただいている作品のなかに、日記的なある夏の日の一コマを描いた『ベランダの蝉』という800字足らずの掌編と、白い螺旋階段を昇る(あえてこの漢字を使っています)愛された”私”を描いた『イカロスの翅』という2000文字程度の掌編があります。
読んでくださった方が、随分たってから、ふと
「ベランダとイカロス、前に読んだんだけど、視線違いの同一作品かと、今、思った。」
と言ってくださいました。
『ベランダの蝉』は、ベランダで死にゆく蝉を見つめる私と猫のお話です。
『イカロスの翅』は、”彼”に愛された”私”が、終わる もしくは 昇る もしくは 落ちる 作品です。
イカロスとは、云わずと知れた、イカロスの翼として有名なあのイカロスです。”翅”とは、”はね”と読みますが、昆虫に生えている”はね”のことです。羽ではなく、”翅”としたのには訳があります。
もちろん、イカロスの”私”は、昆虫だと決めているわけではありません。女性であってもいい、虫であってもいい。幸せな老人の死であってもいい、自殺した裏切られた人間であってもいい。
ただ、翅に在る、支脈を、命そのものとして、脈動として、イメージして……。
美しさと、もろさ、儚さ。
そんな様々な思いを込めて書きました。
「読者の勝手な解釈では、イカロスの私はベランダの蝉。」
その方には、そう言っていただきました。
”the missing piece” の記事でも書いたのですが、作品に込めた気持ちを、読者の方にどのように感じ取っていただけるのか、はっきりとは書かなければ書かないほどに、伝わったときの喜びは、それはもう大変なものがあります。
自分が書いている文字の集まりでは、明るい日差しとさわやかな風、心地よさ、そういった気持ちよさを感じていただきたいとおこがましくも願っています。暗いものもありますが、その場合には、重い事象を重く語らず軽やかに、反発せずに見れるように、それはもしかすると哲学じみた傾向を帯びるかもしれませんが、自分の中でもひたすらにきっと悩んできたいろいろなことを、ほんの少しでも共感していただけることができるなら、とてつもなくうれしいと感じてます。
話を戻しますと、この方は、もんのすごい開発をすべてひとりでやられていて、その合間に、きっと脳みそ沸騰しかけてクールダウンしたときに”ふと思っ”ていただけたのでしょう。
ふと思い出す。10日ほど前に読んだ作品の、通り過ぎた一瞬の風景を、今、なんとなく、ふと、思い出す。
ものすごくうれしかったんです。興奮しました。
いのちは、いのちあるものにしか、宿らないのか。
いのちは、なにに、宿るのか?
おじいさんの時計には、いのちがありました。認めてくれたのは、おじいさんです。
ベランダの蝉でいえば、蝉には、いのちがありました。寄り添ったのは、ベランダのこちら側の猫と私です。
それは、子どもが植えた、朝顔の鉢植えであっても、良いのだと思います。それらはすべて
イカロスの翅に出てくる、
”愛された私”と”愛してくれた彼”
もしくは
”愛してくれた彼”と”愛された私”
の関係です。(このふたつは、異論はあるでしょうが、わたしは同じとは考えていません)
いのちは、ただ万物に宿るのでしょうか。
そんなことを考えています。
伝わったという思い。それが喜びです。
感謝の気持ちを込めて、今日の記事とさせていただきました。
寄り添っていただいている、故に”生きて”いるのです。
本当にありがとうございます!!!
おやすみなさい!
nijino noran.
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。