© 虹乃ノラン All rights reserved.

せなかのくぼみ (Lyric) ココア共和国2024年2月号電子版掲載 佳作II

あたし翼をなくしたの

そう言ってぼくに背中を見せたきみは、

きれいな肩甲骨には自由自在にへこむくぼみがあって

ぼくはきみをずっと裏返して見ていたくなる。

園芸用のスコップには、

小さな苗を小さな鉢植えに寄せるための

それは小さなスコップがあって、

それがぴったりな大きさだ、

なんてことを考えながらぼくはきく。

なくした翼はどうしたの?

さあ、なにしろいたくて、いっぱい血が出たから、

いたみをふさぐことに、あたし夢中になったから、

消えた翼がどこへ行ったかなんて、

ぜんぜん覚えてないんだもの。

柔らかいはだに、爪を立てたい気持ちに蓋をして、

口を開いて、心を探る

傷なんか一筋だって、ついてない。

見えないの?

見えないよ。

変ね。でもまあ、いっか。

翼がもげた傷なんて、じぶんにはみえるわけはないんだから、

きみはきっと嘘をついている。

でも絶対そうだとも、いいきれなくてぼくは、

肩甲骨のくぼみに指を3本はわして、

痛かったねときみを抱く。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


虹乃ノランの名前の由来について

お久しぶりです。お知らせや告知ではないもので、ここでこうして筆(キーボード)を執るのはとてもとても久しぶりな気がします。 最近、スマ…

202512/1

「破滅派23号」に寄稿しました。

「赤に舫う」というホラー短編を寄稿しました。こちらから購入が可能です。 破滅派23号 特集:AIをリライトする 破滅派…

ココア共和国12月号に掲載されます。

ココア共和国12月号、今月もとっていただけました。 ココア共和国12月号 4コマは「果てる」と「からだ」の二本。 4コマ…

文学フリマ東京41に出店しました。

2025年11月23日に東京ビッグサイトで開催された文学フリマ東京41に出店してきました。屋号はハミング研究所。初参加でなにかと不慣れなこ…

ココア共和国11月号に掲載されます。

ココア共和国11月号、今月もとっていただけました。 4コマは「心ころころ」と「とことこ晴れ」の二本。これは以前「くすりのじかん」とし…

ページ上部へ戻る