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Lost Stars(Lyric)ココア共和国2024年3月号電子版掲載 佳作II

 昨日、ぼくはライオンが捕らえた鹿にキスをするのを見たよ。サバンナ? いやもちろん、アニマルプラネットティーヴィーでだよ。

 昔飼っていた猫のフィーヴィーが、捕まえたイモリを愛しそうに舐めていたよ。そして最後の最後まで食べた後に、とても満たされた表情をして、窓際で眠っていたんだ。

 恍惚の表情にみえたよ。こんなことをいうと、君は大袈裟だっていうかもしれないけれどね。

 食べることと躰を重ねることは、似てるってよくいうだろ? 君は以前いっていたよね。ぼくを取り込んでしまいたいって。その境界線を奪い去ってしまいたいって。

 体と体を隔てる、なにかしらの細胞が邪魔だって。こんなものいらない、取り込んでしまいたいって。

 ぼくはとても君を愛してた。君がいうことはちょっと気味がわるくて、そんなことをいいながら泣くから、なんで泣くんだろうって、痛いのかな、やめてほしいのかなって、でもどうしていいかわからないけど、君が求めることはどこまでも底がないように思えた。

 ぼくはすこし恐ろしかった。君はぼくを取り込みたいといった。そしてぼくは、自分が君に取り込まれていきそうなことをひしひしと感じていた。

 君は、躰のなかに星があるといった。爆発する前の星のようだといった。ビッグバンだといった。あたしは、もうすこししたら弾けてしまうと。そして泣いた。よくわからなかった。

 ぼくは、君にあやまらなくてはいけない。君はぼくをきっと食べたかったんだろうと思うんだ。そうじゃないと君は繰り返したけれど、ぼくはいつまでも君を満たせないことを、この躰をもって知っていた。

 君は満たされない、いつまでも。ぼくは逃げた。満たしたかったけれど、とりこまれて融合してきみと永遠に生きる勇気はなかったんだ。

 だからごめん。君はきっといつかその瞳に映る星を失う。それはきっと君が弾けて、宇宙になったそのときだ。

 ぼくは遠くから、それを信じてる。

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